エネルギー転換 ドイツのエナギーヴェンデ

用語集

バックアップ電源

バックアップ電源という言葉に明確な定義はないが、一般的には、別の発電所が発電できなくなったときに備えて、一部の発電所を待機状態に保っておくことを示す。風力および太陽光発電の場合、調整可能なバックアップ電源が常に必要とされる。だが、これはそのうち余剰自然エネルギー電力を蓄電するという形で対応できるようになるだろう。従来型の発電所ではしばしば不具合が起こるため、常にある程度のバックアップ容量が必要である。輸入電力への依存度が低い国は、その発電容量の一部をほぼ常に待機状態にしている。さらに、ドイツを含む多くの国には、「予備容量」として緊急時にしか稼働しない発電所がある。ドイツの電力系統では、通常、石油火力発電所が予備容量となっている。

ベースロード/ミディアムロード/ピークロード

ベースロード発電所は、その国で常に必要とされる最小限の電力をまかなう発電所である。たとえば、ドイツの電力消費量は真夜中でも40 GW(キロワットの項参照)を大幅に下回ることはめったにないため、ベースロードはおおよそ40 GW前半であると考えられる。この負荷を担う発電所は、通常、運転中は24時間稼働している。一方、ミディアムロードは、ほぼ毎日到達する負荷を指す。一般的な平日のドイツの電力消費量は、軽々と60 GWに確実に達する。したがって、ミディアムロードは40~60 GWの範囲内と考えることができる。この負荷を担う発電所は、定期的に稼働しているが、出力量は日ごとに変動する。ミディアムロードを超える負荷は、すべてピークロードと呼ばれる。ドイツでは、電力需要が80 GWを超えることはほとんどないため、ピークロードは60~80 GWであると考えられる。ピークロードをまかなう発電所はほとんど稼働していないが、急速に出力量を上げることが求められ、いったん停止すると何日も何週間も待機状態となることが多い。

褐炭/リグナイト

「無煙炭」の項参照。

(二酸化)炭素/温室効果ガス排出量

火星が地球よりもはるかに寒い理由の一つは、火星に大気がないことである。もともと、地球の大気は毛布のような役割を果たしている。地球に届く太陽の光は、大気中で散乱しながら通過する。その過程で、熱がすぐに放散されず大気に蓄積されるのだ。この保温効果を高める機能に優れたガスは数多く存在する。これをなるべく簡単に示す方法として使われているのが炭素排出量であり、その量が一番大きいのが二酸化炭素である。つまり、文明化によって地中に(石炭、ガス、石油として)埋まっていた炭素が掘り出され、大気中に放出されることにより、大気の毛布としての効果が高まるのだ。このようなガスは、まとめて「温室効果ガス」とも呼ばれるが、その肯定的な語感には疑問を呈する人もいる。確かに、気温の急激な上昇がもたらすのは、「温室」という言葉から連想されるような好ましい結果ではなく、非常に深刻な事態である。こうしたことから、「温室効果ガス」の代わりに「温暖化ガス」という言葉も使われている。同様に、より聞こえのよい「地球温暖化」の代わりに「気候過熱化」という言葉も使われている。

設備利用率

発電設備の定格容量(例:kW単位で測定される)に対するエネルギー出力量(例:kWh単位で測定される)の比率。たとえば、定格容量が1.5 MWの風力発電機は、理想的な環境下であれば理論的には1日当たり最大36 MWh(1.5 MW×24時間)の発電が可能である。このように、発電機が常時その最大出力で稼働しているとき、設備利用率は100%となる。実際には、陸上風力発電機の設備利用率は、立地のよいところで25%程度なので、1.5 MWの発電機なら平均0.375 MWで運転し、1日あたりの発電量は9 MWhとなる。ドイツでは、陸上風力発電機の設備利用率は20%未満だが、洋上風力発電機の設備利用率は30%台半ばと推定されている。太陽光発電の場合、設備利用率は太陽光の量に大きく依存するが、通常は10~20%とされている。「全負荷時間」も参照のこと。

コージェネレーション/トリジェネレーション

発電設備の廃熱を回収して有効に活用することを、熱と電力の「コージェネレーション」という。廃熱の一部が冷却にも用いられる場合は、「トリジェネレーション」と呼ばれる。これと混同しやすいのが、回収された廃熱(蒸気)が下流にある2つ目の発電機を稼働させ、さらに発電を行うものの、他の用途には活用されないガスタービンコンバインドサイクル発電である。コージェネレーションでは、回収された廃熱をさらなる発電に使用するのではなく、暖房やプロセス加熱などに用いている。

需要側管理(デマンドサイド・マネジメント、DSM)

単に「需要管理」とも呼ばれる。電力は容易に保存することができないため、消費量と発電量を正確に一致させる必要がある。これまで、電力供給システムは、供給側が需要に合わせて管理できるよう設計されており、中心となる発電所が電力需要の増減に合わせて発電量を調整していた。しかし、断続的、間欠的な自然エネルギー(「調整電源」の項参照)の場合、電力供給はそれほど簡単に調整できないため、需要側で管理しなければならない。たとえば、電力に余裕があるときに冷蔵庫や冷凍庫の設定温度を下げてさらに冷却しておくことで、発電量が少なくなる時間帯を「乗り切る」ことができるようにする。このような調整によって、ピーク時の電力需要をわずかにシフトさせることができる。

調整電源

電力需要に応じて停止と運転を切り替えたり発電量を増減させたりすることができる発電所を、調整可能な発電所という。この点で最も柔軟なのはガスタービンだが、新型の石炭火力発電所も発電量の変化に柔軟に対応している。旧型の石炭火力発電所は、原子力発電所と同様に、いったん起動したらフル稼働に近い状態でしばらく運転させておくほうがよい。ガスタービンと同じように、バイオマスの発電設備も素早く調整できるものが多い。新しい自然エネルギー電源のなかで調整電源と考えられているのは、ドイツではこのバイオマスだけである。風力と太陽光は、常時発電することができない「断続的」な電源だとされているが、その発電量は遅くとも1日前には確実に予測できる。最も重要なのは、風力や太陽光の発電設備が「調整」できない、つまり停止と運転を切り替えられないことである。このほかの調整可能な自然エネルギー電源は、水力発電を除くと地熱発電と集光型太陽光発電だけだが、この2つはドイツにおける導入規模は限定的だ。

分散型電力

多数の小規模発電設備(屋上太陽光パネル、風力発電機など)で発電された電力のこと。これと対をなすのは、大規模発電所(原子力や石炭の発電所だけでなく、メガソーラーや大規模ウィンドファームも含む)を中心とする集中型電力供給である。

エネルギー効率

エネルギーの投入量に対する有効な出力量のこと。設備利用率と混同してはならない。風力および太陽光のエネルギー効率は、自然エネルギー以外の電源とは根本的に異なるものを測定する。たとえば、ある旧型の石炭火力発電所のエネルギー効率が33%だとすると、石炭のエネルギーの3分の1が電力になり、残りの3分の2が廃熱として失われる。それでも、市販のソーラーパネルのエネルギー効率である15%と比べると、33%は効率が高いように思える。しかし、ここには以下のような違いがある。石炭は消費されれば永遠に失われるため、できるだけ効率的に利用すべきというのは納得できる。言い換えれば、使った分が失われるということになる。一方、太陽光をできるだけ効率的に利用すべきというのも当然のことである。ただし、太陽光や風力の場合、使わない分が失われることになる。地球は、太陽から毎日ほぼ同じ量のエネルギーをもらっているが、風力発電機やソーラーパネルで回収しなかったエネルギーは、永遠に失われているのだ。この違いが顕著になる例として、石炭火力発電量は、測定の対象を一次エネルギーとするか実用エネルギーとするかによって異なるが、風力や太陽光による発電量は、一次エネルギーでも実用エネルギーでも同じ量であることに留意したい。

エネルギー作物

エネルギー供給だけのために栽培される作物のこと。たとえば、食用に栽培されたトウモロコシは、その残渣を回収してエネルギーを生成したとしても、エネルギー作物にはならない。引き続きトウモロコシを例にして説明すると、バイオガスを生成するためのエネルギー作物として栽培されたトウモロコシは、実際にその実が熟して食べられるようになる前に収穫され、作物全体がその過程で利用される。一方、エタノールを生成する場合は、食べられる実の部分だけが利用される。

エネルギー集約型

ドイツでは、大量のエネルギーを消費しながらも国際競争に直面する企業は、自然エネルギー電力のコストを担う賦課金が大幅に減免されている。この減免措置の適用を受けるのは、年間電力消費量が1 GWh以上の「特権産業」に該当する企業である。2011年の時点では、300社ほどのエネルギー集約型企業が、その消費電力の9割に対して1 kWh当たり0.05ユーロセント、残りの1割に対して賦課金全額にあたる3.52ユーロセントをドイツの固定価格買取制度の費用として支払った。その他の消費者は、電力消費量全体に対して1 kWh当たり3.52ユーロセントの賦課金を負担していた。さらに、年間電力消費量が100 GWh以上で、総生産費に占める電気代の割合が20%を超える企業は、消費量の残りの1割に対しても、賦課金全額の支払いが免除されていた。

エネルギー同盟

新しい欧州委員会は、EUのエネルギー安全保障を強化するため、今後数年のうちにエネルギー同盟を設立することを目指している。しかし、エネルギー政策に向けて進むべき道筋について、EU加盟国間でほとんど合意が得られていないため、おそらく大きな進展は見られないだろう。現在は、エネルギー安全保障と供給価格の適正化を中心に議論が行われている。

全負荷時間

発電容量の利用度をパーセンテージで示すのが設備利用率だが、バイオマス、石炭、天然ガス、原子力のように運転と停止を切り替えられる調整電源に特に便利に用いられるのが、「全負荷時間」である。通常、1年は8,760時間である。たとえば、特定の発電設備で採算をとるために必要な年間運転時間を示すときに、全負荷時間が用いられる。例として、ある発電所で採算をとるために必要な全負荷時間が4,000時間だとする。これを設備利用率に換算すると、4,000 / 8,760 = 45.7%となる。 設備利用率50%で運転する場合、全負荷時間4,000時間を達成するために必要な実際の運転時間は8,000時間となる。

発電容量/定格容量

特定の条件下における発電設備の最大出力量。たとえば、ある風力発電機の定格容量が1,500 kW(1.5 MW)であったとしても、その出力量は強風時にしか達成できない。「設備利用率」の項も参照のこと。

系統アクセス

系統アクセスがないことは、自然エネルギーの拡大を阻む要因の一つとなっている。ドイツでは法律によって、自然エネルギー電力に系統での優先権が与えられており、発電量を下げるときは従来型の発電所が対応することになっている。他の国では、従来型の発電所の採算性を確保するために、風力発電機や太陽光発電設備が系統から切断されやすい状況にある。さらに、ドイツの法律では、系統運用者に系統の拡張を義務付ける条件を規定し、風力発電機、バイオマス発電機、太陽光発電設備が接続できるようにしている。系統への接続ができないと、自然エネルギーへの投資は無意味なものになってしまう。

総エネルギー/最終エネルギー

総エネルギーには、エネルギー部門内でのエネルギー消費や送配電ロスも含まれる。一方、最終エネルギーは、燃料や電気として各消費者のもとに届けられるエネルギーのことである。つまり、発電・送配電中の損失は含まれていない。たとえば、ドイツの2011年の総電力消費量は、およそ600 TWhだったが、正味の電力消費量は約535 TWhだった。この「失われた」65 TWhは、発電所そのもので消費されたか、送配電線で失われた電力である。「一次エネルギー」の項も参照のこと。

無煙炭/アンスラサイト

リグナイトが「褐炭」の別名であるように、アンスラサイトは「無煙炭」の別名である。ドイツに豊富にある褐炭は、石炭のなかで最も純度が低く、比較的水分が多いため、エネルギー含量も比較的少ない。したがって、通常は長距離にわたって輸送されることはない。一方、無煙炭はより密度が高くエネルギー含量も多いため、低コストで世界中に輸送できる。石炭の「塊」と聞いて一般的に思い浮かぶのが無煙炭であり、それより柔らかいのが褐炭である。しかし実際は、リグナイト(褐炭)とアンスラサイト(無煙炭)には明確な区別がなく、「一つの領域にある2つの範囲」としてとらえるのが一番分かりやすいかもしれない。実際、米国で利用されている石炭の多くは「瀝青炭」と呼ばれるもので、ドイツで無煙炭と呼ばれているものよりエネルギー含量がやや少ない。

キロワット(kW)とキロワット時(kWh)

1,000 Wは1 kWである。同様に、1,000 kWは1 MW、1,000 MWは1 GW、1,000 GWは1 TWである。「1,000 W」と表示されたヘアドライヤーは、最大風量時に1 kWの電力を消費する。その状態で1時間使用すると、消費電力は1 kWhとなる。同様に、動作中に2,000 W消費する電化製品を30分動作させると、消費電力は1,000 Wh(または1 kWh)となる。「kW」と「kWh」はよく混同されるが、この2つの用語は全く異なるものを指す。「kW」を車のエンジンの出力量である馬力に例えると覚えやすい。馬力は「kW」と同じで、エンジンや電化製品に本来備わっている能力を示す。しかし、車はその馬力をフルに発揮することはほとんどなく、1日の大半は何もせず静止している。つまり、能力に対して仕事量を示すのが「kWh」であり、大まかにいえば運転距離(km)に相当する。

メリットオーダー

市場で電力が発電所から購入される順番を示すもの。メリットオーダーでは、現在稼働中の発電所のなかで最もコストが高いものに基づいて、電力の取引価格が決定する。発電所はその「限界費用」の順に並べられ、その順番をもとに稼働する。「限界費用」とは、簡単にいえば運転費(特に燃料費)のことであり、発電所の建設費などは含まない。石炭や原子力の場合、発電所の建設費は高いが、運転費は比較的低く抑えられる。したがって、限界費用も低くなり、全負荷時間も長くなる。一方、天然ガスタービンの場合、建設費はあまり高くないが、天然ガスの価格は世界的に高い地域が多い。そのため、天然ガスが石炭より高い場合は、ガスタービンの運転時間は短くなる。このケースに当てはまるのがドイツだが、英国など当てはまらない国もある。自然エネルギー電力は系統において優先権があるため、価格による順位付けは行われない。そのため、自然エネルギーは消費量の減少と同じ効果をもたらす。つまり、ピーク時に稼働する最もコストが高い発電所の運転時間が減るため、電力の取引価格が低下する。

パッシブハウス

太陽熱(太陽光)を「パッシブ(受動的)」に利用することにより、エアコンや暖房装置などによる「能動的」な加熱や冷却の必要性を根本的に減らすエネルギー効率の高い建物(住宅またはその他の建築物)のこと。パッシブハウスにはセントラルヒーティングは必要ない。古い建物のなかでも、改築によってこの基準を満たすものが増えてきている。気候が温暖なところでは、パッシブハウスを建てることによって冷房の需要を大幅に補うことができる。

一次エネルギー

供給システムから消費者への出力量を示す「実用エネルギー」に対して、供給システムに投入されるエネルギー量のこと。つまり、石炭火力発電所に投入される大量の石炭は一次エネルギーだが、発電所から出力される電気は二次エネルギーであると考えられる。たとえば、エネルギー効率が40%の石炭火力発電所は、電気の形で生産されるエネルギー(二次エネルギー)の2.5倍の一次エネルギー(石炭)を消費している。風力および太陽発電では、一次エネルギーと二次エネルギーの間に差はない。「エネルギー効率」の項も参照のこと。

小売市場

小売市場での代表的な電力消費者は、一般家庭や小規模事業者である。このような電力購入者は低圧で系統に接続されており、電力消費量も比較的少ない。また、これまでは系統から電力を得る以外に安価な手段がない「籠の鳥」だったため、たいてい最も高い価格で電力を購入してきた。自然エネルギー、とりわけ蓄電池付き太陽光発電の拡張により、こうした状況は世界規模で変わりつつある。

スマートエネルギー

ITがあらゆる規模のエネルギー消費機器や発電設備と結びつくとき、登場するのが「スマートグリッド」、「スマートメーター」という言葉である。電力の発電量は、同時間帯に消費される量とぴったり同じでなければならない。そうでなければ、蓄電が必要となる。消費量と生産量を調整して一致させるためには、データを活用することができる。産業界は、生産量を調整することでこうした系統のニーズに既に応えているが、このような対応は一般家庭でも可能である。たとえば、冷蔵庫やエアコンの電源を一時的に切ることにより、需要のピークを「カット」できる。このとき停止した機器は、電力消費量が少なくなったときに長めに稼働させておけばよい。

スポット/1日前市場

ドイツのような自由市場では、電力の売買を長期契約で行うのが最も一般的であり、電力の大半はこの方法で取引されている。しかし、ドイツの電力購入契約では18カ月前という条件が適用されることがあるが、実際の電力需要をそれほど早くから予測することは不可能である。そのため、残りの電力は、比較的即時の購入を扱うスポット市場と、翌日の購入を扱う1日前市場からなる電力取引市場で購入される。天候に影響を受け、24時間以内であれば確実な予測が可能な太陽光や風力などの自然エネルギー電力にとって、1日前市場は特に興味深い市場である。

卸売市場

他の商品と同じく、電力は卸売市場と小売市場の両方で取引されている。ドイツでは、大口購入者(企業や電力小売事業者など)と大口販売者(発電所)は電力購入契約を直接結ぶことができるが、スポット市場で販売される電力もかなり多く、取引量も増加している。直接購入契約の設定価格は、一般的にはスポット市場の価格に基づいて決定される。この設定価格は、ドイツでは通常2~3年間適用される。