エナギーヴェンデが必要な理由

地域経済の強化と社会的公正の実現

自然エネルギーを地域で所有すると、出資した地域社会は大きな経済的見返りを受ける。エネルギーの効率化と自然エネルギーを組み合わせれば、貧困層にも化石燃料の価格変動リスクを回避する手段を提供できる。

地域社会が自ら出資するプロジェクトは、外部の大企業が出資するものに比べてはるかに経済的見返りが大きい。米国立再生可能エネルギー研究所が2009年に行った調査によると、外部の組織が所有するプロジェクトと比べて「稼働期間中の経済的効果は約1.5~3.4倍」大きいという。

地域による所有はドイツでは広く普及しているが、その他の国では大きな障害に直面している。世界風力会議2012年大会の地域所有に関する部会では、特にカナダ、オーストラリア、米国において、地域の力が「あたかも政治的論争を巻き起こす行動主義の一形態」のように見られていることが分かった。しかし、マクロ経済的に見れば、エネルギーを国内資源から購入するのと外国から輸入するのとでは、大きな違いがあるのも事実である。

たとえば、家の暖房のために灯油を輸入すると、そのお金は国外に流出してしまう。しかし、太陽熱温水器を設置して熱需要の一部を補うようにすれば、無料でエネルギーを得ることができる上、エネルギーに支払った費用のうち、国内、さらには自分の住む地域内に残るお金がはるかに多くなる。支払ったお金が、インフラ設備(学校、道路、研究など)への税金投資というかたちで、間接的な利益として自分のもとに戻ってくるのだ。ドイツでは具体的なプログラムに関する経済効果の試算が多数行われている。たとえば、政府による自然エネルギーへの資金援助の多くは、ドイツの開発銀行であるドイツ復興金融公庫(KfW)を通じて行われている。その建物改修プログラムでは、税金投資額1ユーロ当たり3~5ユー ロの税収が得られると推定されている こうした建物の改築は、灯油や天然ガスの輸入削減に貢献するだけではなく、建築業界にとっては大規模な雇用の保護および創出の機会となる。

地域で付加価値が創出されることには、変化を受け入れる意識が高まるといううれしい副作用がある。たとえば風力発電所を建設するとき、知らない外部の投資家がプロジェクトの後ろ盾となっている場合と比べて、地域の資金が投入される場合は、建設には賛成だが近所に作られるのは嫌だという意見(NIMBY主義)がはるかに少ない。ドイツでは、何百ものエネルギー協同組合が設立されている。こうした組合では、市民が集まって共同で自然エネルギーに出資しており、エネルギー効率化への出資も増えてきている。多数の発電所プロジェクトに加えて、地域社会が自ら域内の系統を管理できるように、大規模系統運用者から地域の電力系統を購入するというケースもある。

ドイツの地方自治体では、特に年間の域内エネルギー生産量が消費量より多い地域を対象として、自然エネルギーとエネルギー効率化にビジネスチャンスが見出されている。自然エネルギーへの投資による地域経済の活性化については、第2 章 - I 「人々による人々のためのエネルギー」で詳述する。

貧困層の保護

エネルギー転換の持つもう一つの重要な側面は、社会的公正である。特に、エネルギーの効率化は国内の付加価値を高めるだけでなく、エネルギー貧困を削減する。エネルギー貧困は、ドイツの物価上昇によって表面化した問題である。長期的に見れば、自然エネルギーの価格は安定するだろう(風力や太陽光の発電には燃料費がかからず、設備費は下がり続けるため)が、化石燃料と原子力のコストは今後も確実に変動し続ける。したがって、エネルギー転換そのものがエネルギー貧困を抑制するのに有効なのだ。

エネルギー価格の上昇で最も影響を受けるのは、低所得世帯である。このような世帯では、平均的に所得に占めるエネルギーコストの割合が大きい。しかも、省エネ改修、省エネ機器、低燃費車など、エネルギーの効率化への投資をする余裕がある可能性は極めて低い。エネルギー貧困への最も有効な対策は、低所得世帯の住宅を改修してエネルギー需要を減らすなど、大規模なエネルギー効率化対策を実施することである。

エナギーヴェンデの一環である全国的なプロジェクトとして、現在ドイツ政府の支援を受けて「エネルギー監査」が行われている。その目的は、生活保護受給者も含めたすべての人が電力、暖房エネルギー、水を節約できるように支援することである。さらに、節電・節水製品(小型電球型蛍光灯、オン・オフスイッチ付き電源タップ、節水シャワーヘッドなど)も支給される。このようなエネルギー監査は、エナギーヴェンデによって協力のあり方の画期的なコンセプトが生まれることを示す一例である。