主要課題の技術的側面

石炭火力発電の減少

気候目標を達成するためには、ドイツは石炭火力発電を減らさなければならない。今のところ、石炭の消費量は増減が続いており、2011年から2013年にかけて増加したのち、2013年から2014年の間に6%以上減少した。しかし、炭素価格の上昇と自然エネルギー電力の競争力の向上によって、この増減を繰り返す傾向はそのうち終わると予想される。それまでの間、ドイツの二酸化炭素排出量が上限値を超えることはないだろう。2014年の(ガスを含む)化石燃料からの発電量は、過去35年間で最低を記録した。

さらに、二酸化炭素回収・貯蔵技術はコストが高く安全性にも問題があるため、ドイツ政府は民意に反してこの技術を推進することはないと既に明言している。

ドイツが17基の原発のうち8基を2011年に廃止し、残りを2022年までに段階的に廃止すると決定したとき、その埋め合わせとして石炭火力発電が急増するのではないかという懸念があった。しかし、石炭で発電すれば気候目標を達成できないため、そのような計画は存在しない。何といっても、無煙炭の代わりに天然ガスを燃焼させると、二酸化炭素の排出量は約半分で済む。ドイツ国内で大量に産出される褐炭の場合、二酸化炭素排出量は天然ガスの3倍になる。さらに、石炭火力発電所は、天然ガスを燃料とする柔軟性の高いタービンほど、素早く出力量を増減させることができない。そのため、自然エネルギーによる発電の不足分を時間単位で埋め合わせるには、天然ガスタービンのほうが適しているのだ。将来的に自然エネルギー由来のガス供給を実現するまでのつなぎ役としての天然ガスについては、第2章 – H「柔軟な発電」を参照いただきたい。

しかしながら、石炭火力発電の消費量は、次のような理由により一時的に増加した。

  1. 8基の原発を廃止する決定が突然下されたため、失われる容量の代替を用意する時間がなく、電力会社が既存の発電所に頼らざるを得なかった。
  2. EUにおける景気の悪化により、エネルギー消費量が減少し、間接的に二酸化炭素排出量が減ったため、炭素の価格が下がり、そのため石炭火力発電の価格も下がった(第3章-C「排出量取引」参照)。
  3. 原子力エネルギーの段階的廃止が決定される数年前から計画・建設されていた数基の石炭火力発電所が、現在新たに稼働を始めている。

新たな石炭火力発電所の計画

数年前、ドイツの4大エネルギー会社が30基以上の新たな石炭火力発電所を建設する計画を立てた。しかし、現在ではこの計画はかなり縮小されている。地元の猛烈な反対や水利権の獲得の問題など、さまざまな理由で数多くのプロジェクトが中止になったが、最も大きな理由は、自然エネルギーの発展を考慮して再評価した結果、利益性に疑問が出てきたからである。ドイツにおける石炭火力発電容量(無煙炭・褐炭の合計)は、2015年ま でに9 GW近く増加する予定である, しかし、これからはミディアムロードおよびベースロードの電力供給に自然エネルギーが使われることが多くなってくるため、これらの新しい石炭火力発電所の設備利用率はだんだん低下していく。さらに、2011年に原発の段階的廃止が決定してから、新たな石炭火力発電所の建設は提案されておらず、当時構想段階にあった数件の計画も, その後中止になった。.

2014年の電力需要の減少により、褐炭による発電量は3%以上下落した。しかし、原発の段階的廃止の期間中は(2022年末まで)、電力部門における褐炭のシェアは比較的安定を保つと見込まれている。無煙炭による発電については、原発の段階的廃止の期間中においても、自然エネルギー電力のシェア拡大のペース次第で、大幅にシェアを奪われる可能性がある。

石炭火力発電にCCSという選択肢はない

二酸化炭素回収・貯蔵技術(CCS)については、この10年間にわたって世界中で頻繁に議論されてきた。この技術は、その支持者によって「クリーンコール(環境に優しい石炭)」技術という誤解を招く名で呼ばれる。本来、この技術は汚染物質と二酸化炭素を回収し、別々に貯蔵するものである。これ以上排出量を削減することが極めて困難なセメント生産などの工業のプロセスにとっては、CCSは温室効果ガス排出量を減らす手段として有効かもしれない。しかし、発電所にとっては魅力的な技術ではない、というのが大半のエネルギー専門家の見解である。なぜなら、CCSは発電所の効率を大幅に下げ、結果的に燃料費を大きく上昇させるからだ。

しかも、CCSへの投資は法外に高くつくことが判明している。2006年、ドイツはシーメンスの設計による初のCCS試験施設をシュヴァルツェ・プンペに設立した。ここにはスウェーデンの電力会社ヴァッテンフォールが所有する石炭火力発電所がある。しかし、その成果はあまり芳しいものではなかった。というのも、ヴァッテンフォールは2番目の実証プロジェクトとして、シュヴァルツェ・プンペにおけるパイロット施設の10倍規模となる300 MW規模の施設建設を計画し、EUからの資金提供も受け始めていたのだが、2011年末にその計画の中止を発表したのだ。ヴァッテンフォールは、貯蔵に適した場所のあるドイツの各州が、そのリスク受け入れを拒否したため、計画を進めることができなかったと述べている。

その上、この技術は環境保護主義者たちにもほとんど歓迎されていない。汚染物質とCO2を貯蔵しても、貯蔵施設で漏れが発生しないように管理しなければならなくなる次世代に人々にさらなる問題をもたらすだけだからである。地域社会も、二酸化炭素の貯蔵施設が近くに作られることは望んでいない。そこで、CCSを支持するメルケル連立政権は、2012年にドイツ各州政府との妥協案に合意した。現在では、各州政府は二酸化炭素貯蔵施設の建設計画を拒否することが可能になり、今後こうした貯蔵施設が建設される可能性は非常に低くなった。この合意では、施設の法的責任者を稼働開始後40年間は事業者、その後は州政府、つまり納税者とすることも規定されている。

その上、この技術は環境保護主義者たちにもほとんど歓迎されていない。汚染物質とCO2を貯蔵しても、貯蔵施設で漏れが発生しないように管理しなければならなくなる次世代に人々にさらなる問題をもたらすだけだからである。地域社会も、二酸化炭素の貯蔵施設が近くに作られることは望んでいない。そこで、CCSを支持するメルケル連立政権は、2012年にドイツ各州政府との妥協案に合意した。現在では、各州政府は二酸化炭素貯蔵施設の建設計画を拒否することが可能になり、今後こうした貯蔵施設が建設される可能性は非常に低くなった。この合意では、施設の法的責任者を稼働開始後40年間は事業者、その後は州政府、つまり納税者とすることも規定されている。

2012年7月には、ドイツの元エネルギー大臣であるペーター・アルトマイヤー氏自身が、ドイツ国内でのCCS計画の断念を表明し、次のように述べた。「我々は現実的にならなければならない。民意に反して二酸化炭素を地中に貯蔵することはできないし、無煙炭・褐炭の火力発電所にCCS技術を導入することを政治に受け入れた州は一つも確認できていない。」