主要課題の技術的側面

風力

ドイツにおける自然エネルギーへの転換は、第一に1990年代初めの風力発電の導入から始まった。現在では、陸上風力発電は最もコストのかからない新しい自然エネルギー電源となり、国の電力供給の約9%を占めている。また、陸上風力発電の多くは、中堅企業と小口投資家で運営されている。しかしこの特徴は、発展が始まったばかりの洋上風力発電においては様相が異なる。

2014年、ドイツでは電力の約8.6%が風力発電機により発電された。そのほぼすべてが陸上に設置された発電機による電力である。ドイツ政府は、2020年までに風力発電のシェア(陸上・洋上の合計)を約3倍にする計画である。しかし、発展が始まったばかりの洋上風力と従来からある陸上風力では、状況が大きく異なる。陸上風力の多くが中堅企業および主に地域社会と小口投資家が運営する分散型の風力プロジェクトからなるのに対し、洋上風力はほぼすべてが大企業により運営されており、こうした企業の多くは今まで自然エネルギーへの転換に反対してきた。そのため、従来からある陸上風力発電事業者は、古くなった陸上風力発電所をリパワリングすべきだと主張している。発電機の技術は1990年代から大幅な進化を遂げており、今では従来と比べてかなり少ない発電機でもはるかに多くの電力を発電できるようになった。また、陸上風力は洋上風力に比べると大幅にコストが安い。

風力発電機のリパワリングは、ドイツの重要課題である。ドイツで風力発電が始まって20年が経ち、固定価格買取制度を適用された最も初期の風力発電設備は、もう耐用年数に達している。耐用年数まで数年残っている風力発電設備でも、最新の発電機と比べれば用地を効率的に利用できていない。何しろ、現在導入されている平均的な発電機の出力量は、1990年代半ばに製造された発電機の約10倍なのだ。つまり、古い発電機を新しいものに取り替えれば、風力発電所の視覚的インパクトを軽減しながら、より多くの風力発電が可能となるのだ。

ドイツには洋上風力発電の計画もある。政府は2020年までにドイツの海に6.5 GWの風力発電を導入することを目指している。ドイツ初の洋上風力発電施設であるアルファ・ヴェントゥス試験場は、2010年に系統に接続された。続いて2011年には、最初の商用風力発電施設であるバード1 とバルチック1も接続された。既に北海におけるドイツの排他的経済水域内の20カ所、バルト海の3カ所に対し、新たな洋上風力発電施設を建設する許可が下りている。

外海の風はより安定しているため、洋上風力発電施設にはより信頼性の高い電力供給が期待されている。一方、洋上風力には、現在のところ陸上風力の2~3倍のコストがかかる。さらに、ドイツの風力発電業界には、洋上風力に対する熱意が今一つ感じられない。これは、洋上風力のプロジェクトが完全に大企業の管理下にあるのに対し、ドイツの陸上風力発電は主に市民により運営されているからだ。実際、メルケル政権による洋上風力への支援は、政府により原発廃止を求められたドイツの大規模電力会社に対する特別な刺激策と見なされることもある。2014年末の時点で、ドイツでは容量にして1 GW余りの洋上風力発電所(発電機258基)が系統に電力を供給しており、さらに923 MW分が建設中であった。

広がりつつある陸上風力発電の受け入れ

これに対して、ドイツの風力発電業界はもともと「有機的に」発展する地域所有のプロジェクトで成り立ってきた。最初は少数の発電機が設置され、風力発電施設が出資者にもたらす見返りの価値が地域社会に認められると、さらに出資者が集まり、新しい発電機が導入される。設置される発電機が増えるにつれて、人々は騒音の心配が思ったほどのものではないことにも気づく。世界的に見ると、風力発電機の健康に対する影響が懸念されているのは、風力発電がほとんど導入されていないところだけだ。風力発電機の密集度が最も高い国であるドイツとデンマークにおいては、健康への影響は議論の対象となるような問題にはなっていない。逆に、環境に悪い石炭や危険が潜む原子力による発電の代わりに、クリーンな風力発電が導入されれば、かえって健康によいと考えられているくらいだ。最終的には、風力発電施設が拡大するにつれて、人々は発電機の「視覚的インパクト」にもだんだん慣れてくる。高圧線用の鉄塔、ビル、道路と比べても目障りではないし、騒音も車より小さいと思うようになるのだ。ドイツにおける自然エネルギーの地域所有については、第2章 – I 「人々による人々のためのエネルギー」で詳述する。

近年の技術発展のおかげで、風力発電を活用するメリットは内陸地域でも高まった。ドイツ南部、特にまだ風力発電がほとんど導入されていない南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州では、山腹や森林への風力発電機の設置を促進するために、最近になって計画に関する障壁が撤廃された。同時に、新設される発電機には厳しい環境基準を満たすことが義務付けられた。初めて緑の党による政権が誕生したバーデン=ヴュルテンベルク州では、風力発電の年間新規導入設備容量を大幅に増加することが計画されている。

一方、米国の風力発電市場は、絶対容量において中国に次ぐ世界で2番目の規模を誇るが、米国のピーク時の電力需要は800 GW弱である。したがって、米国が風力発電でドイツと同程度の成果を挙げるには、毎年20 GWほどの風力発電機を導入しなければならない。米国における導入状況はこれには遠く及ばず、最大でも2012年の13.1 GWである。