主要課題の技術的側面

その他の自然エネルギー

その他の自然エネルギーには、(発電と熱の供給に利用できる)太陽熱や地熱エネルギーなどがある。ドイツでは、たとえばアイスランドや米国と違って地熱エネルギーの将来性にはあまり期待できないが、一部の用途で利用する価値はある。ドイツがエネルギー政策としてあまり注目してこなかった太陽熱は、太陽光発電ほどの成功には至っていない。

ドイツには地中の熱である地熱の資源もある。ドイツ初の地熱発電所は2003年に稼働を開始したが、後続のプロジェクトの多くはまだ実現していない。

今もなお、人々は微小地震活動や騒音、地下水への影響について心配している。したがって、リスクを最小化し、支持を拡大するためには、地域社会による早期の参画、発電所の立地の慎重な選択、最先端の探査・運転技術が非常に重要である。それでも、北米やアジアと比べると、(ドイツを含む)欧州のOECD諸国の地熱資源は極めて少なく、高温によって高いエネルギー収量を実現できる一部の魅力的な地域に限られている。そのため、地熱発電の成長は風力や太陽光と比べると大幅に遅れると予想されている。

自然エネルギー熱

(バイオマスや太陽熱などの)自然エネルギーから発生する熱のことを、「自然エネルギー熱」というが、この語の意味には廃熱を回収して暖房などに利用することも含まれる。ドイツの総エネルギー消費において、熱の占める割合が約40%であるのに対し、電力の割合は全体で20%に過ぎない。したがって、自然エネルギー熱の将来性は自然エネルギー電力よりも高いといえる。しかしながら、ドイツにおける自然エネルギー熱の推進は、固定価格買取制度が導入されていないこともあって、電力ほどの成功を収めていない。ドイツ政府は、2020年までに国内の熱の14%を自然エネルギー源から得るという目標を掲げている。再生可能エネルギー熱法の下では、すべての新築建物に一定割合以上の自然エネルギー由来の暖房システムを設置することが義務付けられている。

バイオマスからの自然エネルギー熱

今のところ、自然エネルギー熱の最大供給源はバイオマスである。その主な原料は木くずや薪、最近増えてきた木質ペレットである。ドイツの市場活性化プログラムも、効率や排出量に関する厳しい要件を設定した上で、バイオマスからの自然エネルギー熱の生成を支援している。さらに、バイオマス発電機からの廃熱も地域の熱供給網に利用されている。実際、ドイツの再生可能エネルギー法では、ほとんどのバイオマス発電設備に発電過程で発生した廃熱の一部を回収すること(「熱と電力のコージェネレーション」)が義務付けられている。

ヒートポンプ・太陽熱からの自然エネルギー熱

自然エネルギー源を利用した新技術が、次々と市場に登場している。たとえば、バイオマスに加えて、地表のすぐ下や地下水から熱を得る「浅い」地熱(地中熱)がある。周囲の大気からの熱と同様に、この熱はヒートポンプと組み合わせて利用される。2013年にドイツに新しく建てられた建物のうち、3分の1にヒートポンプ付きの暖房システムが設けられた。

一般家庭や企業に太陽熱集熱器を設置して、熱の需要を補うこともできる。2013年には、ドイツの太陽熱市場は中国、米国に次いで世界3番目の規模となった。2014年末の時点で、ドイツには200万台以上の太陽熱集熱システムが設置されており、その表面積は約1,840万 m2となった。

特に建物部門では、効率化に投資すれば何十年間も消費量を抑えられるかもしれないが、初期費用は今でもかなり高い。この障害を乗り越えるために、ドイツ政府は自然エネルギー熱の設備(太陽熱集熱器、新型バイオマス暖房機、高効率ヒートポンプ)の導入に資金援助を行う市場活性化プログラムを施行した。詳細は、本稿第3章-Fの「市場活性化プログラム(MAP)」を参照のこと。

それでも、この市場には太陽光発電のような急速な成長は見られない。太陽熱の一般的な年間成長率が10 %程度であるのに対し、太陽光発電は2009年から2011年にかけて毎年約60%も成長した。太陽熱の成長が停滞している理由の一つは、特別な固定価格買取制度があるのが太陽光発電だけで、太陽熱向けには設けられていないことにある。そのため、太陽熱の導入費の一部は、環境税と排出量取引を財源とする政府の助成金で賄われている。太陽熱集熱器のコストは下がったものの、導入費の高止まりもあってシステム全体のコストはなかなか下がらない。加えて、ドイツの太陽熱集熱器の市場は、1~2軒用程度の家庭向け小型器にほぼ限られている。デンマークをはじめとする他の国々では、大規模な地上設置型集熱器が優遇されており、集熱器の価格を5分の1に下げて発熱コストの競争力を高めるなどの措置がとられている。ドイツでもシステムへの資金援助は行われているが、この市場分野にはさらなる発展の余地がある。

今のところ、ドイツの熱需要における太陽熱のシェアはわずか1%程度である。ドイツのエネルギー消費の約40%が熱であり、電力はわずか20%である(残りの40%は車の燃料)ことを考えると、この数字は非常に残念である。

裏を返せば、ドイツの自然エネルギーへの転換のなかで、自然エネルギー熱は他のどの電源よりもはるかに高い将来性を持っているといえる。