クリーンエネルギー政策

固定価格買取制度を定めた再生可能エネルギー法

おそらく、ドイツの再生可能エネルギー法(EEG)ほど、目覚ましい成功を収めて、世界中の手本となった法律は他にない。この法律は、自然エネルギーの系統への優先接続を規定し、自然エネルギーへの投資家が、電力取引所の電力価格に関係なく、投資の見返りをもたらす十分な補償を受け取らなければならないと定めている。結果として生じる投資の安全性の高さ、そして面倒な手続きがないことは、EEGが自然エネルギーのコストを大幅に削減した主な理由として挙げられることが多い。対照的に、固定枠制度(RPS制度)は、コスト抑制を目的とした様々な自然エネルギー技術の展開を確保するようなインセンティブや安全性を投資家に提供してはいない。

1990年代初頭、ドイツは、風力発電、太陽光発電、小水力発電など自然エネルギー源による発電を推進するために非常にシンプルな政策を打ち出した。2000年には、固定価格買取制度の改正、拡大、強化を行った。制度は、3年から4年ごとに見直され、法律の改正を行う(第4章 エナギーヴェンデの歴史を参照)。最後の大きな改正は、2014年8月に行われた。(第3章 - K、2014年の再生可能エネルギー法改正の項を参照)。

太陽光発電設備および風力発電所の所有者は、系統へのアクセスを保証された。系統運用者は自然エネルギー電力の買い取りを法律によって義務付けられ、その結果(狙い通りに)従来の発電所は発電量を抑制せざるを得なくなる。その過程で、自然エネルギー電力が従来型電源の発電分を直接相殺するのである。

固定価格買取制度は、50カ国以上がドイツに倣って広く採用しているが、系統アクセスという核心は見落とされがちである。固定価格買取制度のおかげで利益が見込めるプロジェクトも、系統接続がないために、中途半端なままになっていることがある。

この点は、ドイツにおいても決して理想的な状況ではない。おそらく、ドイツのプロジェクト開発者は誰でも、系統接続の遅れに対しての不満を抱えているだろう。とはいえ、全体的に見れば、実に簡単にタイミングよく接続できる系統が大半である。ドイツのEEGに規定されている系統アクセスの条件は、おそらく他の国のプロジェクト企画者も歓迎する内容だろう。

ドイツの電力会社と締結する固定価格買取制度の標準的な契約書はたったの2ページである。それにひきかえ、米国の電力購入契約(PPA)は、70ページにもわたり、売り手と買い手(つまり電力会社)の間で個人的に交渉しなければならない。ドイツの固定価格買取制度は20年間保証され、PPAに比べれば期間も非常に長い。もう一つ重要な側面を見落としてはならない。PPAを作成するには、弁護士団とは言わないまでも弁護士が必要であるのに対し、固定価格買取制度に関する2ページの契約書は、普通のドイツ人なら問題なく理解できる。

柔軟な買取価格

買取価格は極めて簡単に説明できる。基本的には、システムのコストを、システムが耐用年数(一般的に20年間)にわたって発電すると合理的に期待できる電力量(kWh)で割ると、システムのkWhあたりのコストが出る。そこに、もたらしたいと思う投資利益(ROI)を上乗せすると買取価格が出る。ドイツでは、目標ROIは一般的におよそ5%から7%である(実際にはこの数値は様々である)。

この方法により(太陽光、風力、バイオマスなどの)技術の区別だけでなくシステムの規模も区別できる。最終的には、土壌汚染などで再利用できない土地に設置した巨大な太陽光発電設備が、屋上に設置した数多くの分散型太陽光発電パネルよりも安価な電力を発電するだろう。システムの規模によって異なる買取価格を提示することにより、様々な事例の経済的継続性を確保し、それによって、大規模プロジェクトの棚ぼた的な利益を防ぐことができる。

EEGは非常に野心的な目標を設定している。たとえば、電力に占める自然エネルギーの割合を2025年までに少なくとも40%から45%、2050年までに少なくとも80%にする計画である。発電をほぼ全面的に自然エネルギー源に変えるためのこの法規定は、ドイツのエナギーヴェンデの重要な柱の一つである。

固定価格買取制度に対する批判

固定価格買取制度を批判する人々は、この政策が最も安価な自然エネルギーを推進していないと非難する。

しかしながら、この結果は予期しなかったものではない。そもそもそれが、固定価格買取制度を成功させる要素なのだ。考えてみれば、(英国の再生可能エネルギー買取義務や米国の再生可能エネルギークレジットなどの)固定枠制度は一般的に、電力会社が自然エネルギーによる電力を一定量(たとえば、2020年までに10%)発電または購入することを義務付けている。そうなると、電力会社は最も安価な自然エネルギー電力を探し求めるが、それは大抵が風力発電、しかもほとんどの場合が大規模な風力発電所で、発電機が数基しかない地域主体のプロジェクトではない。しかし、ドイツは、風力発電のみに焦点を絞って、太陽光発電を買い叩くようなことはしない。

また、固定価格買取制度を批判する人々は、この政策が「勝者を選ぶ」とも非難するが、実際には、固定枠制度が常に風力発電を選ぶのに対し、固定価格買取制度は、規定した種類のエネルギーすべてを平等に支援する。よって上記の批判は、誤解に基づいたものだ。今まで、従来の電源は通常、互いに競合していた。たとえば、電力会社は、発電コストの最も安い発電所をできるだけ多く稼働したままにし、需要が増えた時だけコストの高い発電所を稼働させる。しかし、自然エネルギー電力に常に優先権があれば、コスト面で従来型の電力と競合することはない。さらに、固定枠制度では、金融機関がリスクベース賦課金を追加する。したがって、資金調達コストが固定価格買取制度よりも高くなるため、固定価格買取制度の方が投資家に長期の信頼性をもたらすことになる。

しかし、固定価格買取制度下では競合がないと結論づけるのは正しくないだろう。ある買取価格に対し、企業(パネルメーカーから地域の設置業者まで)は顧客獲得競争を繰り広げている。たとえば、自宅に太陽光発電設備を設置したい場合、ドイツでは、地域の2、3の設置業者から見積もりを取る。設置業者もまた、単結晶パネルにするか多結晶パネルにするか、ドイツ製にするか海外製にするかなどの選択肢を出してくるだろう。利用できるすべての業者は競合しているのだ。

市場を開放する固定価格買取制度

驚くことではないが、固定価格買取制度は不要な物価高騰を招かない。実際、ドイツの太陽光発電は世界で最も安価である。それは、太陽光が多いからではなく、固定価格買取制度による投資の確実性と成熟した市場のおかげである。 米国の太陽光に恵まれた地域よりドイツのほうがずっと安価である。, たとえば、米国で最大の最も費用対効果の高い電力会社規模の太陽光発電所は、ドイツの中小規模の設備よりもかなり高価な電力をいまだに発電している。ロッキーマウンテン研究所は、米国の産業用屋上太陽光発電(10kW~100kW)のコストを2013年末で1Wあたり4ドルを少し超える程度と見積もっているが、それに比べて、ドイツでは1.5ドル程度である。

太陽光発電用シリコン供給の問題がやっと解決した2008年まで、固定価格買取制度に反対する人は、ドイツは買取制度によって太陽光発電に金を払い過ぎた結果、発展途上国をはじめとする他の国に比べて高いコストを維持していると非難していた。しかし、2008年に物価が急落し始めてから、批判は聞かれなくなった。そうした批判がそもそも間違っていたためだ。

ドイツでは太陽光発電の固定買取価格制度の変化が価格を下落させたのではなかった。それどころか、ドイツの政治家は、大急ぎで太陽光発電の買取価格を下げて、価格下落についていこうとした。固定価格買取制度がドイツの太陽光発電の価格を他の国に比べて高く維持したと主張していた人々は、太陽光発電の買取価格削減によらずになぜ価格がそれほど下落するのかを今こそ説明する必要がある。

実を言えば太陽光発電は、依然として競争市場があるため、買取価格が変わらなくても安くなる可能性がある。屋上太陽光発電設備を設置したいと思う人は、市場で最も安価な商品を選ぶはずだ。

再生可能エネルギー法(EEG)のコスト

EEGの買取価格は定期的に引き下げられることになっており、通常は年1回引き下げて自然エネルギー電力の価格が下がり続けるようにしている。風力および太陽光に対しては、現在1年あたり2.5 GW規模を目標とする「成長コリドー(回廊)」もある。この目標を上回れば、予定よりもさらに引き下げられる。残念ながら、現在の市場設計には不備があり、自然エネルギーによって産業用の卸売価格が下がると、実質的に消費者用の小売価格が上昇する。グリーン電力は電力取引所で販売され、発電事業者に支払われた買取価格と電力取引による収益との差が自然エネルギー賦課金として転嫁される。

市場における自然エネルギーの力強い発展を維持するため、新規導入した発電システムの買取価格は毎年引き下げられる。段階的・計画的に行う価格引き下げの「逓減率」は、各種技術の成熟度によって異なる。価格は、水力が年に1%、陸上風力が四半期ごとに0.4%、太陽光が月に0.5%、バイオマスが四半期ごとに0.5%下がることになっている。バイオマス、太陽光、風力に対する逓減率は、前年の市場規模にある程度依存して変動する。太陽光発電市場が1年に1 GWを下回れば、逓減率は増加することもある。

固定価格買取制度のコストは、電力消費者に転嫁される。2015年までに、この賦課金により小売価格は、1 kWhあたり6.1ユーロセント程度上昇した。これは、電力小売価格(毎月の接続料金は含まない)のほぼ4分の1に相当する。こうした投資は、エネルギー輸入を減らすだけでなく、温室効果ガス排出量およびその結果生じる気候変動のコストも軽減する。

しかしドイツでは、自然エネルギー電力が小売価格を上げる一方、卸売価格は下がってきた。特に太陽光発電は、ピーク消費時の昼過ぎに発電する。通常、こうした時間帯には、最もコストの高い発電機も稼働するが(「メリットオーダー効果」)、現在ドイツでは、低コストの太陽光発電が、このコストのかかるピーク需要電力を大いに補っている。

必要とされる変化

皮肉なことに、自然エネルギー電力のコストから卸売電力の価格を引いた差額を賦課金として転嫁するという計算方法により、卸売価格が低下するとEEG賦課金額が上昇する。そのため、自然エネルギーは卸売電力価格が安くなると、電力価格に占める自然エネルギーの割合が大きくなったように見えるため、単なる計算方法のせいとはいえ、消費者は自然エネルギー電力がコストを上げる要因だと思ってしまう。

対照的に、エネルギー集約型産業は、この傾向から莫大な恩恵を受けている。というのも、エネルギー集約型産業は、一般に小売価格ではなく卸売価格を支払っている。さらに、エネルギー集約型の産業・鉄道会社はEEG賦課金を大幅に免除されている。言い換えれば、ドイツでは現在、消費者と中小企業が、グリーン電力のコストを過度に負担しているのだ。

しかし、EEG賦課金は次第に、貧困層がどうやって電気料金を支払い続けるのかという社会政策問題になりつつある。自然エネルギー支持者からは、エネルギー集約型産業に対する減免措置の廃止を求める声が高まっている。こうした産業界は自然エネルギーのおかげで卸売価格の低下による利益をすでに得ており、引き受ける負担を徐々に増やすべきだからである。エネルギー集約型産業が賦課金を全額支払うことを義務付けられれば、2015年の1 kWhあたりのEEG賦課金は、6.1ユーロセントではなく4ユーロセント程度になると見積もられる。