欧州の状況

準備万端:待ったなしのフランスのエネルギー転換 カトリン・グラストラ氏および

フランスのエネルギー政策は、原子力エネルギー政策一本に要約されることが多く、ドイツのエナギーヴェンデと脱原発に対立するものとして提示される。しかしながら、パリの2015年国際気候会議に関して、フランスは自国のエネルギー転換アジェンダを策定し、欧州の中心で協力強化の機会を広げた。この新たな視点を確かなものとするために、今後数カ月および数年にわたり、大きな政策展開をもたらす多くの政治的意思と手腕が必要となる。

歴史家のガブリエル・ヘクトが受賞した著書で述べているように、1950年代後半に核兵器を手に入れ、オイルショック後には民生用原子炉の急速な開発が進んでからというもの、原子力エネルギーは、フランスの国家アイデンティティの象徴となり、エネルギー政策の範囲をはるかに超えた。このことを考えると、電力における原発の割合を75%から50%に削減するフランソワ・オランド仏大統領の目標は、技術変革の観点からの構造転換を示すだけでなく、フランスにおけるエネルギーシステムの将来への新たな道を切り拓く意欲をも示している。

確かに、原子力の未来よりもはるかに重大なのは、現在審議中のエネルギー転換に関する法案の問題で、これは2015年7月までに採択しなければならない。この枠組み法は、2012年から2013年に国内のステークホルダーが行ったエネルギー転換に関する討論会の結論に基づいて、エネルギーシステムを持続可能なものにするためにフランスが直面しなければならない構造的問題を発端とする、エネルギー転換に向けた包括的戦略の構築を目指す。意外にも、エネルギー転換の主要な目標については、この枠組み法のおかげでフランスとドイツの間で一致する意見が増えた。

何よりもまず、温室効果ガス排出量が比較的低レベルだとはいえ(フランスでは一人当たり8.3 トンに対しドイツでは11 トン)、フランスが依然として輸入化石燃料に大きく依存している事実、および地球温暖化を2度以下に抑制するシナリオを実現するには温室効果ガス排出量の75%削減を達成しなければならない事実を隠すべきではない。実際、フランスの最終エネルギー消費の70%は今も化石エネルギーに由来し、石油だけで約43%にのぼる。一方、電力は総エネルギー消費量の約4分の1を占めるのみで、原子力単独で18%である。状況はドイツとよく似ている。これは輸入エネルギー費が年間一人当たり1,000ユーロを超えることを意味し、持続可能エネルギーや省エネを行う地域プロジェクトの資金として利用できるはずの膨大な資本が流出している。

上記を踏まえると、2050年までに最終エネルギー消費を50%削減し、2030年までに化石燃料の使用を30%削減するという極めて野心的な目標は、新法の一番重要な部分である。しかし、この目標の達成には、建物だけでなく、ドイツと同じくエネルギー転換から取り残されている輸送部門も含めたエネルギー効率政策の劇的な加速化が必要となる。エネルギー効率は、自動車および公共交通部門における共通の業界利益を考えると、両国間で協力する主要な分野になるだろう。

第二に、現在のエネルギー体制がいつまでも続かないことをフランスも徐々に認識している。1970年代から1980年代にかけて建設された大半の原子力発電所が平均耐用年数の30年に達する。原子炉の寿命は最大60年まで簡単に延長できると主張する者もいるが、不明な点が多い。フランス原子力安全庁は最近、無視できない「システム上の欠陥」リスクがあると指摘した。ほとんどの原子炉が同じ設計に基づいて建設されているため、ある原子炉の技術的欠陥は他の原子炉にも広がるということになり、かなりの部分の原子炉を早急に閉鎖する必要が生じ得る。さらに、近年の政策報告書や輸出報告書は、既存の原子炉の全面的な改良に係る費用および技術的な実現可能性に対する大きな不安を裏付けるものとなった。特に費用面では、1,000億から4,000億ユーロの範囲の費用がかかる可能性があり、そうなると原発の発電コストは70ユーロ/MWhから最大で130ユーロ/MWhにまで上昇するおそれがある。つまり、原子力だけに投資するよりも、エネルギーと電源構成を多様化するためのプランB、原子力エネルギーのコストに関する仏議会委員会の最近の報告でも確認された選択肢を準備する時が来たのだ。

すなわち、フランスは一日も早く自然エネルギーの時代に入らなければならないということだ。実際、最近流出したフランス環境庁Ademeの報告によると、条件と政策枠組みがそろえば、許容できるコストで2050年までに100%自然エネルギー電力システムを達成することは可能だとしている。

それと同時に、法案には2030年に向けた非常に野心的な目標が明記されている。2030年までに、電力に占める自然エネルギーの割合40%を含め、自然エネルギーの合計比率を現在の14%から32%に増やすとしているのだ。とはいえ、現在のプロジェクト開発は、数多くの行政上の障害に対処しなければならない上に、2020年の目標に大きな後れを取っている。たとえば、ドイツでは風力発電プロジェクトを完成させるのに3年で済むのに対し、フランスでは最大8年かかる可能性がある。2010年の太陽光発電の一時的な成長鈍化や、風力発電固定価格買取制度に関する法的な争いによって引き起こされた不確実性により露見した政治的安定の欠如は、確かに、成功を妨げる最大の障壁である。新しい法律はこうした障害をある程度取り除くことを目指すが、法律自体にも多くの不安がある。ドイツの事例に倣い、またエネルギーの国庫補助金に関する新たなEUガイドラインの圧力を受け、フランスは現在の固定価格買取制度を、2016年初めに市場プレミアム制度に切り替え、おそらく2017年までに技術中立的なオークション制度に変更することになるだろう。

結局、フランスの大きな課題の一部はエネルギー転換の統治能力、ガバナンスに関連しており、原発、中央集権的意思決定のあり方、国営独占企業の歴史的な結びつきが新たな組織形態に進化していかなければならない、ということが暗示されている。ドイツの100%再生可能エネルギー地域イニシアチブに類似した「ポジティブエネルギー地域」を支援する国家プログラムなど、地域活動の重要性を認識させる前向きな措置もすでに講じられている。ドイツの成功に触発され、フランスは市民主導の共同エネルギープログラムを支援する新たな対策と、こうした技術に対する国民の支持を高めるための専用クラウドファンディングも計画している。

エネルギーに関する仏独協力は、お互いの好奇心と誤解と固定観念に満ちた愛憎関係と言えるかもしれない。しかし、もしフランスがエネルギー政策の新たなページを開く用意があるなら、そして上記で概説した様々な問題を考えると、両国ひいては欧州におけるエネルギー転換を成功させるためには、強固な協力関係を再構築する絶好の機会があるだけでなく、それが必要な場面も出てくるかもしれない。