欧州の状況

チェコのエネルギー状況:自然エネルギーはわずかに進歩したが、将来への展望はまだ開けない

2015年まで、チェコのエネルギー部門は2004年に施行した政策に従っていた。政府はエネルギー戦略を刷新するために5年を費やしたが、現在、提出された計画は、時代遅れの原子力技術に焦点を当てたものだった。チェコのエネルギーに関する立法と政府戦略の主要な主体である産業貿易省が、提出された計画に沿って、石炭、ウラン、石油、天然ガスを主体とするエネルギー政策を牽引している。

EUの2030年に向けた気候・エネルギー政策目標に関する協議中にチェコ政府の方向性について気づいた国もあったかもしれない。当初、チェコは、EUにおける自然エネルギーの割合を増やす試みを妨害しようとした。クリーンエネルギーの成長を阻止できないと認識したチェコ政府は、せめて拘束力のあるEU目標範囲だけでも変えようとした。現在も、産業貿易省は、他の戦略文書で原子力エネルギー支援を実行しようとしている。

エネルギー政策に関する5年間の取り組みと開けない展望

産業貿易省は2009年に国家エネルギー政策の策定を開始した。最初のバージョンは「石炭戦略」とでも呼べそうな政策であった。町や村を破壊してでも石炭採掘を拡大することを基本とし、石炭エネルギーは原子力によって補完されることになっていた。2010年の選挙後に誕生した右翼政権は原子力エネルギーに力を入れた政策を掲げ、総発電量に占める原子力の割合を最大80%に強化することを要求した。万一こうした事態になれば、チェコは、原子力大国フランスさえも凌ぐだろう。チェコ最大の発電所チェコ電力ですら、この政策は行き過ぎだと考えた。

2013年に誕生した、ČSSD(社会民主党)、ANO(事業家アンドレイ・バビシュ氏の党)、KDU-ČSL(キリスト教民主同盟=チェコスロバキア人民党)で構成される新政府により、エネルギー戦略の最終決定を迫る圧力が強まった。5年以上かけて準備した末、2014年末に政府が発議した新エネルギー政策は、2015年5月に承認された。新たな政策はテメリンとドコバニに新原子炉を建設して原子力の割合を最大50%にすることを目指している。産業貿易省は、原子力をチェコのエネルギー独立を強化するエネルギー源として提示している。しかし、同政策は総エネルギー消費量の増加も予測しているため、原子炉の新設に関係なく、ガス消費量が10%増加することになる。

この政策は、ヤン・ムラーデク産業貿易大臣(ČSSD)の主導で策定されたが、天然ガスからの脱却をもたらすことはないだろう。

産業貿易省は原子炉新設計画ばかりに焦点を当てたため、はるかに重要なもう一つのエネルギー源を見落としていた。意外なことに、この「源」は従来の意味の源ではない。エネルギーの効率化である。エネルギー効率を高めることにより、チェコは、ロシアから輸入されるガスへの依存を最小限に抑えることができる。現在、天然ガスは主に暖房に用いられているため、古い建物を改築してエネルギー効率を上げると、チェコはガス消費量を半分にできるのだ。この事実は目新しいことではない。2008年に専門家が独立エネルギー委員会のために初めて行った試算に上記の数字は出ていた。ただ、現在の政府が、最新のエネルギー政策にこのデータを使わなかった理由については謎である。

活用されていないエネルギー効率対策のポテンシャルだけが、国家エネルギーコンセプトの更新に関するチェコのエネルギー論争の問題点ではない。産業貿易省は新規の原子炉がどうしても欲しいあまりに、独自の計算で原子力発電所の建設コストを極めて低く見積もったように思われる。この論争には初めから、国民の支持も市民の民主的参加もなかった。

さらに悪いことに、原子力という選択肢以外の代替エネルギー政策計画は検討されてさえいない。計画段階で代替オプションは策定されたものの非現実的であると早々に片づけられてしまった。チェコ政府の独立エネルギー委員会が自然エネルギーのポテンシャルに関する最初の計算を行ったのは6年前だが、現在の見通しは6年前の計算値と比べてほぼ4分の1も低く評価されているという状況があり、代替エネルギー政策の却下は何ら驚くべき事態ではない。

残念なことに保留状態の自然エネルギー

ドイツのエネルギー転換に触発されて再生可能エネルギー支援法をチェコ議会が承認した2005年、チェコのクリーンエネルギーの未来は前途洋々であった。補助金の導入により、風力、バイオマス、太陽光エネルギーさえも成長し始め、今日ではこれらが家庭電力消費量の10%を賄っている。

けれども、特に太陽光エネルギーについて問題が生じた。2010年、すなわち太陽光発電技術の価格が大幅に低下した際、チェコ議会が太陽光エネルギーに対する投資家の関心の高まりにすばやく対応できなかったため、投資が急拡大し、数年間で合計2,000 MWの太陽光発電容量が導入された。政府はその後、太陽光発電の投資家に対し、保証された収益を低下させる太陽税という形で遡及変更を行い、ビジネス環境を不安定にした。2010年以降、新規太陽光パネルは建物にしか設置できなくなり、2014年にはこうした設置に対する支援が代替案も示されないまま打ち切られた。

2015年には小規模だが前向きな刺激策がいくつか実施された。バイオガス発熱プラントへの支援が復活した他、チェコ太陽光発電産業協会やエネルギー自給同盟を始めとする業界団体が、小規模発電所の運営を妨げる行政上の障壁を取り除くよう繰り返し求め、その要求を産業貿易省が聞き入れた。これは、ますます経済的になる自然エネルギーに対し、国民の関心を呼び戻す第一歩である。エネルギー法の修正案によると、導入量が最大10 kWまでの小規模発電所の免許は、系統に接続されている発電所も含めて不要になる。

チェコの進展するエネルギー部門の状況

上述したチェコの自然エネルギーに関する経験は、国がやってはいけないことの悪い見本として説得力がある。だが、クリーンエネルギーが独自の発展を遂げるに任せたとすると、チェコのエネルギー部門はどんなふうに見えてくるだろうか。

チェコでは長い間200万世帯を賄う十分な電力を風力エネルギーで発電してきた。再生可能エネルギー源会議所および国際環境NGO「FoE・チェコ」のHnutí DUHAによると、風力発電はチェコの電力の3分の1を発電する潜在能力を有している。これは、新規の原子炉ほぼ2基分に相当する。技術革新のスピードに関しては、太陽光エネルギーが明らかにチェコの自然エネルギー市場をリードしている。国内の設置可能な屋根の利用を考慮するだけでも、太陽光エネルギーは200万世帯以上に電力を供給できる。半世紀も経てば、バイオマスも(潜在的なグリーン電力の56%を発電する)クリーンエネルギー源および(潜在的なクリーンな熱の68%を供給する)熱源としてより重要な役割を果たすだろう。

したがって、チェコで自然エネルギーを最大限に成長させるために必要なのは確固たる政策である。改定された法律は、世界のエネルギー転換の現在の動向とかけ離れてしまっている。チェコのクリーンエネルギーの地位を向上させるには単純な法案さえあればよい。たとえば、非金融メカニズムであるネットメータリングは、屋上太陽光パネルに関心を集めるきっかけとなりうる。しかし、現政府の計画は主に原子炉の増設に焦点を合わせることに終始しており、自然エネルギーについては法的義務から考慮するにとどまって、必要な支援をいまだに策定していない。