欧州の状況

スペインのエネルギー転換 – 今後の進むべき道は?

スペインのエネルギー転換は、2013年2月に新規の自然エネルギー発電建設に対する経済的インセンティブを廃止したことに端を発して、数年前から衰退の一途をたどっている。すでに2008年に明らかになっていた多額の「タリフ債務」は、2012年には推定255億ユーロにのぼっていた。この債務は実質的に、公定電力価格が発電コストを完全に賄っていないという事実によるものである。このことから、スペインがエネルギー転換構想を継続するつもりなら、自然エネルギー支援スキームの大改革が必要になることは明らかだ。

氏およびI氏

2001年の最初の欧州再生可能エネルギー指令は、欧州におけるクリーンエネルギー転換へのスペインの影響力を示し促進する足掛かりとなった。影響力の主な理由は、スペインがすでに国内法によって、2010年までにエネルギーミックスに占める自然エネルギー比率を全体で12%にするという目標を定めていたことである。実際、この指令が施行された時点で、スペインでは立法手続きを新たに必要とするものはほとんどなかった。このことは、これまでの方向性についてスペイン市場に対する信頼と自信の土壌を築くのに役立った。さらに、固定価格買取制度(FIT)やプレミアム型(FIP)など自然エネルギー生産に向けた支援対策を最初に講じた国もスペインであった。全般的には2007年まで、スペインの自然エネルギー部門は極めて順調に推移し、2005~2006年には8.9%拡大した。しかし、この頃タリフ債務の問題も出始め、スペインが自然エネルギー部門のトップを維持できなくなる政策の採用につながった。

2009年の再生可能エネルギー指令は、再生可能エネルギー法定目標の他、電力、輸送に使用するバイオ燃料、冷暖房の3つの部門に対する規制を策定した。電力部門は、スペインが最も著しい成長を遂げた部門である。実際、スペインの2011~2012年の中間目標期間における自然エネルギー比率は、冷暖房部門が13.5%、輸送部門が6%であるのに対し、電力部門は31.5%であった。

2011~2012年の中間目標を達成し、スペインは2020年の目標を達成するために正しい方向に進んでいた。しかし、経済危機の深刻化、信頼できるエネルギー戦略の欠如、合計255億ユーロにのぼる気の遠くなるような額のタリフ債務など数々の要因によりスペインは停滞の時代に突入した。

電力コストとタリフ債務を縮小するため、新政権は、新設したエネルギープラントの支援策を2012年1月に中止した。最終的にはこの中止が、2013年2月のFIP制度の完全廃止につながり、自然エネルギー発電に対する主な支援を危険にさらした。FIP制度の廃止は特に、スペインの自然エネルギー電力の大半を担う風力発電所(2011年の太陽光発電所の発電量7,000 GWhに対し、風力発電所は45,000 GWh)の事業者に影響を及ぼした。自然エネルギー支援策を減らしたのは、債務の原因が自然エネルギーへの投資コストの高さによるという思い込みに基づいたものだった。さらに、EUの2020年目標との一貫性のなさが露呈した。債務を生じさせることになったその他の重要な要因としては、石炭火力発電所の補助制度、また、2000年頃の従来型電力のコスト増加に電力料金を適応させなかったことが挙げられる。

こうした政府の対策が招いた重大な結果として、スペインは 2020年国家目標を達成できないだろう。 これは自然エネルギー生産者の努力に対してだけでなく、この部門で優位を維持してきたスペイン全体にとっても残念な結果である。加えて、政府の対策は、いわゆる「エネルギー貧困者」を増やす大きな要因にもなった(スペインの人口の約10%が高額な電力料金を支払う余裕がない)。国家経済に対するエネルギー部門の重要性を考えると、明確で首尾一貫した長期的な展望に立った政策が必要とされていることは間違いない。

エネルギー依存率が約73%に上る国で、支援策を打ち切ることは、適切な判断であるとは言い難い。スペインは、長期的に実施したいエネルギー政策を決定する必要がある。しかし現在のスペインは、2020年目標をどうやって達成するかばかりを考え、その先の目標を何も提示していない。

スペインは、たとえば以下に掲げる対策を追加すれば、エネルギー転換を強化することができ、また、そうしなければならない。

タリフ債務の公的監査の継続

スペインのエネルギーシステムは、発生した負債や実際にかかったコストについて、ブラックボックスのように中身が分からない。適切な改革と透明性を促進するために2つの監査が必要である。まず、タリフ債務蓄積の原因となった政治的な判断と責任および正確な負債額を分析するタリフ債務の監査である。次に、電力買取価格に起因するすべてのコストに関する電力部門の監査と各種買取価格に対応するkWh価格を決定するガイドラインの定義である。

自然エネルギーの自家消費に対する法的障壁の撤廃

スペインは、自然エネルギーの自家消費に対する障壁を取り払ってネットメータリング制度を設定することで、太陽光発電システムを運用する消費者が系統に供給する電力の支払いを確実に受けられるようにする必要がある。この制度は欧州の数多くの国で実施されているが、スペインでは今も議論が続いている。

脱工業生産モデル

エネルギー転換は本質的に、高エネルギー消費と高CO2排出から、低エネルギー消費と低CO2排出に基づいたモデルに向けた転換を意味するが、同時に、持続可能で高収入の雇用を数多く創出する転換も意味する。このような「グリーンジョブ(緑の雇用)」を生み出すことが可能な主要部門は以下の通りである。

  • 農業:有機農業の促進および生産と消費の移転。
  • エネルギー効率:建物の改修と断熱、自然エネルギー施設の整備、エネルギー効率の高いシステムの導入。こうしたエネルギー効率化対策により、スペインは、2050年までに約390億ユーロを節約できる。
  • 持続可能な輸送:商品の鉄道輸送を促進し、2020年までにその割合を現在の3.2%から10%に引き上げる。輸送部門は、最終エネルギー消費の40%およびCO2排出量の30%を占めるため、この問題に取り組むには不可欠な部門である。

エネルギー部門の民主化

エネルギー転換は、エネルギー部門に対する民主的管理の強化も意味する。したがって天下り的な慣習を規制することが必要不可欠である。スペインでは、フェリペ・ゴンサレス元首相やホセ・マリア・アスナール元首相など、高位政治家が従来型電力産業における企業の一員となる例が続いてきた。こうした状況により、旧来の電力会社の利益と合致する政策が講じられることが多いため、数多くの政府の対策に対して、国民は多大な不信感を抱いている。こうした慣習に終止符を打つため、明らかに利害が対立するこの部門に、政治家が関与できない一定の期間を設けることを求める必要がある。

上記の提言は、環境保護上も社会的にも必要なエネルギー転換を推進し、自然エネルギーにおけるスペインの優位を取り戻すのに役立つだろう。